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2005年6月

研修生たちPart1

ハンドによる吊り込み(研修生)
P1010211  今年、5人の研修生が入ってきました。研修生は日中は工場で決められた仕事をアルバイトとしてこなします。そして仕事が終了した後、工場の材料や様々な機械・工具を使って靴づくりを勉強しています。学校ではないので、決められたカリキュラムが有るわけでもなく、本人の覚えたいことも、やる気も様々なので習熟度もまちまちになってきます。
 当社が、お取り引き先の御子息を預かって靴づくりの「いろは」を学ぶということで行っていた研修スタイルを本格的に研修制度として改めたのは、10年前の事になります。バブル経済が崩壊し、今までの企業感や職業感もあてにならなくなってきた頃でした。日本的経営の根幹であった組織優先型から個性も活かせる仕組みへの転換が迫られていたのもしれません。それまで100%地元採用だった当社に、ある日、茨城県出身の若者が就職を希望してやってきました。大学の工学部で超伝導関連の物理学を専攻してきたという彼は、「科学の限界を感じた」と生意気な事を宣(のたま)い、将来は靴づくりの職人になりたいと言うのです。「それでは暫くここで基本的な勉強して、志が変わらなければ靴の本場のイタリアでもイギリスでも行ってさらなる研鑽を積めばいい」と当時の社長から真っ当なアドバイスを頂き、当社「本格的研修生1号」が誕生しました。彼の探究心は旺盛でベテランの職人を捕まえては教えを乞うのですが、職人の決まり文句は「いちいち教えてられっかー!覚えたかったら目で盗め!」。なかなか簡単には教えてもらえなかったのです。しかし、彼は怯むことなく強烈に粘り、最後には「ちょっとだけな」となるのでした。後世に自分の習得した業を伝えたいという、人間の善なる遺伝子情報はどんな頑固な職人にも宿ると、今私は考えています。
 3年で卒業をと計画を立てていた彼の研修は順調そのものでした。その間、プライベート活動も順調だった様で、見事美人の現地彼女をゲットし、またたくまにその彼女のお腹が膨れてきたのでした。そして彼は見事卒業は諦めて当地での定住を決断したのでした。本格的研修生1号だった彼は今、中堅社員として会社の重要な戦力になっています。

 ここまでのストーリー、ある人は「全て想定内の出来事」という・・・

 その後に続いた、岐阜県出身の男子はパターンを習得中であり、遠く長崎県からやってきた女の子も今ではCADオペレーターとして、二人とも今では正式社員に昇格。当社にとっては大事な大事な戦力となっています。そしてその女の子が「私ってOLですか?」と聞いてきたので、「屋根裏とはいえ、ちゃんとしたCADの置いてあるオフィスなんだから立派なOLだべぇー」と答えると、妙に納得していました。きっと両親や友達には「山形の地でOLしてがんばっています」と報告しているのではないかと想像しています。
 さて、今年一挙に入ってきた5人の研修生。みんなそれぞれの「自分探し」を継続中ですが、カリスマ職人志望やカリスマ・デザイナー志望と個性あふれる人たちで、当初社内では、今まで大切にしてきた人の和(ムラ社会ともいう)を乱す勢力を構成するのでは?と研修生グループを危険視する声もありました。山形のノンビリした空気がそうさせるのか(ここの人はみんな面倒見が良いですから)、半年あまり経過したところで、一人の脱落者も出さず順調に会社の和に溶け込みはじめています。
 「みんな〜、夢は持ち続けろよー」
モチベーションは高いです。
このコーナーも続く

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ラストを削るということPart1

ラストを機械で切削した状態
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 他の仕事をしている人には怒られそうですが、靴づくりのキモはやはりラストメイキングと言ってしまいます。根幹の「履き心地」の出来不出来をきめるのも、「好き嫌いのフォルム」もラスト次第で決まってしまうのですから。
 当社はこの重要なラストメイキングを創業以来づっと外注に依存してきました。つまり専門の木型屋さんに丸投げしてきた訳です。途中何度か自力でと挑戦はしてみたものの、あまりの難しさと労力に「やっぱりプロに任せるのが一番だなぁ」と妥協してきた訳です。しかし、海外からの靴製品の流入が年々増えており、独自性を保つ為にも、ノウハウを蓄積していく為にも、「モデルラストは自社で削りたい」という思いが募っていたのです。
 今年のはじめ、転機が訪れました。神戸のある会社がラストの切削機を紹介してきたのです。手頃な値段にも驚きました。早速導入することにしました。
コンピューター付の切削機
LAST 3次元デジタルデータを入力し、底面と側面を好きなように加工してGOをかければ、みごとに削ってくれるという代物です。使い方を説明しましょう。実績のあるラスト(つまり履き心地に定評のあるラスト)に3次元スキャンをかけます。そういうラストには機能性を左右する重要なデータがつまっています。つまり踵からボールガース(指廻り)までのフォルムが良いのです。つぎに要望のあるトウの形のデータとドッキング。最後につなぎ目にスムージングをかける、そして切削。片足に約2時間かけて削り上がります。これで出来上がり?と思っている人はあまりにもデジタルを過信している方々です。完成しているはずがありません。この段階でおよそ80%の進捗です。この後、納得のいくフォルムを作り上げる為に、ヤスリやパテを使ってひたすら修正をしていきます。--ここてで何かに気付かれました。
修正作業
KEZURI そうです、この時点ですっかりデジタルデータは喪失しています。この後、一度簡単なパターンでテスト履き用の靴を作り履き心地や実際のフォルムのチェックを重ねます。悪ければ再度修正。これを繰り返し、最終的にOKが出れば再度スキャンニングをかけてデジタルデータの完成となります。このデータを基に量産用のプララストを作ることも出来ます。またデータの蓄積は良い靴を作る為のノウハウの蓄積につながり、なによりスピーディーな仕事に対応できることになります。。そんな訳で今年、当社ではちょっとした技術革命が起きた感じがしています。
 しかし、当社はこれらの文明の利器(コンピューターやデジタル的なもの)だけで良い靴が出来るとは考えておりません。やはり、“靴づくりはとことんアナログ”『研ぎすまされた人間の感』や『熟練された業』にはかなうものはないと信じています。でも折角便利なものがあれば、有効に使おうという『ずる賢い知恵』は有している様です。デジタルとアナログの繰り返し。なんとか半年でこの機械を使いこなせるところまできました。現在は有名スポーツ選手の別注用のラストを削り始めています。
 でもこの機械、導入当初、ぜんぜん使いものにならず削りだすラストはまさに『ミュータント』。社員からは「社長の道楽のおもちゃ」と揶揄され、私も「自社でラストを削るのは無理や!」と判断し「こけしでも削っとこうか!」と顔をゆがめて冗談を飛ばしていたこともあったのです。
このコーナーつづく。

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