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ラストを削るということPart1

ラストを機械で切削した状態
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 他の仕事をしている人には怒られそうですが、靴づくりのキモはやはりラストメイキングと言ってしまいます。根幹の「履き心地」の出来不出来をきめるのも、「好き嫌いのフォルム」もラスト次第で決まってしまうのですから。
 当社はこの重要なラストメイキングを創業以来づっと外注に依存してきました。つまり専門の木型屋さんに丸投げしてきた訳です。途中何度か自力でと挑戦はしてみたものの、あまりの難しさと労力に「やっぱりプロに任せるのが一番だなぁ」と妥協してきた訳です。しかし、海外からの靴製品の流入が年々増えており、独自性を保つ為にも、ノウハウを蓄積していく為にも、「モデルラストは自社で削りたい」という思いが募っていたのです。
 今年のはじめ、転機が訪れました。神戸のある会社がラストの切削機を紹介してきたのです。手頃な値段にも驚きました。早速導入することにしました。
コンピューター付の切削機
LAST 3次元デジタルデータを入力し、底面と側面を好きなように加工してGOをかければ、みごとに削ってくれるという代物です。使い方を説明しましょう。実績のあるラスト(つまり履き心地に定評のあるラスト)に3次元スキャンをかけます。そういうラストには機能性を左右する重要なデータがつまっています。つまり踵からボールガース(指廻り)までのフォルムが良いのです。つぎに要望のあるトウの形のデータとドッキング。最後につなぎ目にスムージングをかける、そして切削。片足に約2時間かけて削り上がります。これで出来上がり?と思っている人はあまりにもデジタルを過信している方々です。完成しているはずがありません。この段階でおよそ80%の進捗です。この後、納得のいくフォルムを作り上げる為に、ヤスリやパテを使ってひたすら修正をしていきます。--ここてで何かに気付かれました。
修正作業
KEZURI そうです、この時点ですっかりデジタルデータは喪失しています。この後、一度簡単なパターンでテスト履き用の靴を作り履き心地や実際のフォルムのチェックを重ねます。悪ければ再度修正。これを繰り返し、最終的にOKが出れば再度スキャンニングをかけてデジタルデータの完成となります。このデータを基に量産用のプララストを作ることも出来ます。またデータの蓄積は良い靴を作る為のノウハウの蓄積につながり、なによりスピーディーな仕事に対応できることになります。。そんな訳で今年、当社ではちょっとした技術革命が起きた感じがしています。
 しかし、当社はこれらの文明の利器(コンピューターやデジタル的なもの)だけで良い靴が出来るとは考えておりません。やはり、“靴づくりはとことんアナログ”『研ぎすまされた人間の感』や『熟練された業』にはかなうものはないと信じています。でも折角便利なものがあれば、有効に使おうという『ずる賢い知恵』は有している様です。デジタルとアナログの繰り返し。なんとか半年でこの機械を使いこなせるところまできました。現在は有名スポーツ選手の別注用のラストを削り始めています。
 でもこの機械、導入当初、ぜんぜん使いものにならず削りだすラストはまさに『ミュータント』。社員からは「社長の道楽のおもちゃ」と揶揄され、私も「自社でラストを削るのは無理や!」と判断し「こけしでも削っとこうか!」と顔をゆがめて冗談を飛ばしていたこともあったのです。
このコーナーつづく。

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