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2005年7月

ラストを削るということPart3

 まったりとラストの話を語ろうかと思っていたのですが、HP掲示板『怒りの声』にて、当社のシステムの不備が指摘を受けている中ではヒンシュクものであります。
そこで説明を急ぐことにします。
 当社で個別のラストを作ることをご要望されている方は、まず御自分の正確な足長を把握してください。当社の取扱店には足長器がございます。足長とは、その上に足を置いて目一杯指を伸ばした時の長さです。次ぎに用意されているゲージ靴を何足か履き比べてベストフィッティングのサイズを確定してください。(取扱店によって、経営効率の関係上、30足程しかない場合がございます。あらかじめお試しになりたいサイズを取扱店にご通知ください。当社より貸し出ししております)この時、お試しいただくゲージ靴は、基本的に足長よりも短いサイズはお勧めしておりません。足長よりも若干長いサイズを選ばれることは、靴をスマートに見せるという観点から格段問題はないのですが、極端に長いサイズは屈曲部の位置が違うことになり機能性で低下することになります。あまりお勧め出来ません。御承知おきください。
 次に、ご要望のデザインをお知らせください。(紐付きタイプを推奨します。選べるデザインが豊富ですし、デザインそのものに機能性が加味されます。また紐なしと紐付きの併用は出来ません。バンプやローファーなどのステップインタイプを御希望の方は、足囲が1つか2つ下がります。ゲージ靴の紐を全開にして踵がついてくる足囲をお選びください)
 次ぎの段階で、ご要望の優先順で2つに分けさせていただきます。
 第一は、ご希望のフォルムが決まっていて、それを作られる方です。
この場合は、ご希望のフォルムをより具体的に御指示いただく必要があります。(例えば、正確にトウの形を再現する場合は、再現したい靴に石膏を入れて型取りを行います。これが無理な場合は、現物や写真や絵型から雰囲気を真似て起こすことになります)
 第二は、特段フォルムに拘泥はなく、履き易いという機能を大切にされる方です。(例えばいままで、靴では散々苦労されてきた方などで、是非この機会にマイラストを作り、足に優しく履き易い靴で、もう二度とあの辛い思いはしたくないという方)この場合は、ゲージ靴を店内で十分履き込んでいただいて、その上で問題点を具体的に列挙します。(まず足の踵を靴の後ろに合わせ、甲が緩いとか・踏まずが緩いとか・小指が当るとか、それも部位や数値をより具体的に示していただくことになります)
 勿論、第一第二いずれも望むという方もいらっしゃるでしょう。この場合、極端にフォルムを優先する場合は機能性で、機能性を優先する場合はフォルムである程度の妥協をしていただくことになるということで御承知おきください。
 当社のシステムでは、ゲージ靴を履いていただくことを前提としていますので基本的には、仮縫いは必要がないと考えています。但し、フォルムやデザインが心配の方には仮パターンの段階で、やはり一度足を入れてみたい方には仮縫いの状態で確認を入れることが可能です。
 当社のシステムを最大限利用するということでは、まず入念にサイズを選び、幅出しや乗せ甲の無償サービスを使えば、ほぼ完璧な履き心地を無理なくチョイス出来ることになっています。さらに暫く使用した上での不具合感や物足りなさを埋める方法として個別のラストを作ることをご推奨申し上げます。
 
 発売開始以来、依頼のあった限られた店舗において個別のラスト作成を実施してまいりましたが、お客様からの御指摘通り、オプションシステムとしては連絡が不備でした。あらためてお詫び申し上げます。9月1日から全店舗にて受注可能にする予定でシステムの改編を組みます。料金・期間につきましては9月以降、直接店舗にお問い合わせください。よろしくお願いいたします。

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ラストを削るということPart2

BLラストを削ることがいかに靴づくりのキモかというエピソードを2つ紹介します。
ひとつめは、昔からオーダーメードでは定評のある東京の靴屋さんでのお話。
かなり重症の足の障害(この場合極度の外反拇指)を持つお客様が靴を作られました。紙の上で足型を取り、採寸も入念に行い数カ月後には立派な靴が出来上がりました。
あまりのピッタリさにお客様は大満足。支払いを済ませて、このまま履いて帰りたいと店を出たのですが、駅まで辿り着くこともままならずに引き返してきました。「痛くてこんな靴は履いていられない」とのことです。修正を加えて作り直すこと数回、それに対する答えはすべて「N0!」でした。悩みに悩んだ末、店主は仮説をたてました。『変型した現在の足型に合わせるのではなく、本来の健康な足であったと仮定した足型で靴を作る』ということ。もう一度、お客様の足型をひっぱり出し、曲った指を真直ぐ伸びた足型に書き直し、ラストを作り直したのです。その仮説は見事あたりました。最後に出来上がった靴はお客様の足にぴったりとは行かなかったのですが、いくら履いても足は痛くならない、お客様にとっては手放せない1足に仕上がったのでした。その後、この店主は、『足とは何か?靴とは何か?』を問い続け、在庫になっていた『足には悪そうな靴やラスト』を全て処分し、新しい靴屋として再スタートを切ることになりました。

ARA2ふたつめは今から5年程前のお話です。
 ある会社にお邪魔したところ、海外のラストメーカーで長く研修を積んでこられた、ラストメイキング(特にコンフォートラスト)のスペシャリストがスタッフの一人として、いらっしゃるということでした。
その道を極めた人との偶然の出会いに、早速面談を申し込み、『究極のラストとは何ぞや』という質問をぶつけてみたのです。
 曰く「お客様の要望に応え、どんなものでも削る」とのことでした。
その返答に私はがっかりしました。もう少しまともな答を期待していた私にとって、ラストメイクになんら思想も哲学も持たないダメなやつと思えたからでした。
 しかし、当社がその後、新しい靴を開発しようとする試みの度々に、その人の言葉に隠された含蓄に気付かされるのことになります。機能性を優先させれば美的な感性に妥協が生まれ、少しでも美的要素を加えると機能性が大いに損なわれることの連続。人の足は十人十色、百人百色という現実が重くのしかかって来るのです。
お客様の要望を聞きながら、その要望に真摯に応えようとするその道に
「極まったラストなど存在しない。ラスト道とは長く長く、そして曲がりくねって険しい道」と云いたかったのだろうと思えるようになってきたのです。
良い靴を作る為の良いラスト作り、ラストを削ることに終わりはないと思えるのです。

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