« 本日より横浜タカシマヤに出展中 | トップページ | KAZの靴の聖地・漂流記、帰国編3 »

KAZの靴の聖地・漂流記、帰国編2

年が開けて1986年になると、ウイリアムからKAZ宛に5月に建設中だった新社屋のオープニングセレモニーを開催する旨の招待状が届いた。行かないわけには行かない。KAZは、社長である父親と出かけることにした。たまたま同じ時期にイタリアのミラノで靴の展示会があり、業界でその視察ツアーが企画されており、その間だけツアーから抜け出すことも可能ということだった。かくしてKAZと父親のヨーロッパへの珍道中が始まった。 

 

 

 KAZが予想していた通り、純日本人の父親は、最初の目的地のホテルに着くなり「だめだ日本食を食べないと力が出ない」とか言い始めた。日本をたってまだ1日も経過していないのにである。早速、湯沸かし器をフロントから借りてきてレトルトのごはんとみそ汁を作らなければならなかった。

 

 

 バーカー社には、セレモニーの前日に入った。ウイリアムをはじめ、スタッフとの半年ぶりの再開である。前夜祭には、世界中からバイヤーや関係者が集まった。その場で、発表されたのは、明日のセレモニーのメインゲストが、なんとなんとエリザベス皇太后だということだった。発表後にウイリアムからKAZに伝えられたのは、「貴方たちは、日本からはるばる来てくれた特別なゲストだから、皇太后をお迎えする際は、玄関脇に並び、お言葉を頂戴する役を引き受けてほしい」というものだった。父親の方は、意味もわからずのほほんとしていたが、KAZにしたら一大事だった。日本でも園遊会に呼んで貰える機会など120%ないのに、なんと英国王室の皇太后陛下から直接のお言葉ですから、それゃ、びっくりです。

 

 早速、ウイリアムの家まで行ってレズリーにその場合の礼儀作法をレクチャーしてもらうことに。すると

 

「まず最初の質問に対しては・・・何々です。Your majesty.と答えなさい」

 

「その次からは・・・何々です。Ma’amでいいんですよ」と教えられた。

 

Your majesty』(ユア・マジェスティ)とは陛下ということであり、

 

Ma’am』(マーム)とはマダムの英国流の言い方で目上の女性に使う言葉であった。

 

 KAZの方は、練習すればなんとかなるが、問題は父親の方である。何度も教えるのだが、要領を得ない。さらに時差ぼけで人前で居眠りまで始める始末である。レズリーがそんな父親を見かねて「今日のところはこの辺にしてゆっくり休んだ方がいいわよ!」と気遣ってくれたのでした。

 

 いよいよセレモニー当日です。新社屋の周りには、市長をはじめ街のお歴々の方たちや世界各国からの招待客でごった返しています。大きなホールには、その日特別にケータリングで用意された、たくさんの料理や飲み物が持ち込まれていました。招待客が全員着座するとウイリアムが壇上に立ち、主催者のスピーチを行いました。理由は分かりませんが、静かな声で抑揚もありません。もちろんマイクは通していましたが、KAZはこのスピーチ、一言も理解出来なかったのでした。心の中で、『滞在中とは、全然違うしゃべり方。あれでKAZにも分かるように話してくれてたのは、大分苦労してたんだろうな』と改めて思ったのでした。

 

 午後になり、主賓のやってくる時間になりました。上空からヘリコプターが飛ぶ音がけたたましく響いてきました。近くの教会の裏手の広場に着陸するということだった。玄関先で出迎える予定のメンバーの緊張が一気に高まった。そしていよいよその時が来たのです。

 

 玄関先に皇太后陛下を乗せたリムジンが到着した。案内役はもちろんウイリアムが務めている。大きなドアが開かれると白いドット柄の入った青紫のワンピースを身にまとったエリザベス皇太后が軍服姿にサーベルを腰に差した侍従を従え、歩きだされました。するとその場が一気に花の匂いに包まれたような空気に変わりました。非常に高貴な香りに満たされたのです。

 

Photo_4

 

 

 

 

 

 

一番最初に市長にお言葉をおかけになり、次にはメインのゲストたちの番になりました。そしていよいよKAZと父親の番になりました。その時事件が起こったのです。普通の流れからすれば陛下からお言葉がかけられ、それに丁寧に答える。そういう流れなのだが・・・。なんとKAZの父親は先手を打ったのだ。それも・・・。

 

「どうも!どうも!」とやらかしてしまったのです。それも大変にこやかに。めっちゃ大きい声で。ホント、その辺のお友達と久々に会う感じのフレンドリーな感じで。

 

陛下は一瞬、たじろいだかに見えたが、そこはさすがに高貴さと品性を持ち合わせ、さらに場慣れもしていらっしゃるお方。我々凡人とは違う貫禄。父親の方はサラリとかわし、KAZの方を向いて言葉をかけた。

 

「日本からいらしたの?」と。KAZは練習通り「Yes,Your Majesty!」と無難に答えて難局を乗り越えた。

 

 

 

 この時の写真は、翌日の地元の新聞にでかでかと取り上げられることとなった。そう、その日以来、KAZたち親子は、英国では『サー』の称号をもらったと同じ格を持つ日本人となったのである。(うそつき!)

 

51ao3y0yeol_2

 

 

参考までに 

 

このエリザベス皇太后陛下は、エリザベス二世(現・英国王、女王陛下)の実母であり、前国王のジョージ6世の王妃であったお方である。ジョージ6世の兄のエドワードが離婚歴のあるアメリカ人女性ウォリスとの結婚を選び退位したスキャンダルは有名。ジョージ6世は生来病弱なうえ吃音や足の障害もあった。これらの事実を映画化したのが『英国王のスピーチ』。吃音を克服しながら英国民に語りかける国王に感動。是非ご覧いただきたい映画です。

 

 

 

 

 

 

|

« 本日より横浜タカシマヤに出展中 | トップページ | KAZの靴の聖地・漂流記、帰国編3 »

社長のつれづれ独り言」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: KAZの靴の聖地・漂流記、帰国編2:

« 本日より横浜タカシマヤに出展中 | トップページ | KAZの靴の聖地・漂流記、帰国編3 »